第一三共(東証:4568)|2026年11月5日確認/図の試算参照値は11月4日版

先に私の見方

今回の承認を事業として評価するには、効果の大きさに加えて、誰に、どの順番で、いつから使われるかを確かめる必要があります。とくに気になるのは、術前治療の進歩が、今回の術後市場をどう変えるかです。

エンハーツは、HER2という細胞表面の目印を捉える抗体に、抗がん剤DXdをつないだ薬です。今回の用途は、術前治療後も手術で取り出した組織に浸潤性のがんが残っていた人の、将来の再発を減らすこと。機序と数値の全体像は次の一枚にまとめました。EU承認発表

図で読む:作用機序から適応別の会社・市場評価まで
Enhertu EU27: mechanism to EPS Enhertu EU27: mechanism to EPS 2026-11-05 Original scientific graphical summary. Clinical evidence and author scenario estimates are separated. No third-party artwork copied. image/svg+xml Matplotlib v3.11.2, https://matplotlib.org/
04に会社・主要アナリストの列を併記。みずほは2025/11/26報道による過去評価・原票未取得。EU27数値未確認はゼロではない。

1.術前に使う薬が変わると、術後の市場も変わる

「術前」は手術より前、「術後」は手術の後です。この違いは、同じ薬をどの順番で使うか、という問題でもあります。

術前治療がよく効いて、浸潤性の残存病変がある人が減れば、それを条件とする今回の術後治療の候補も減ります。米国ではエンハーツの術前の使い方も承認されています。今回の欧州術後承認とは別の事実ですが、将来の患者数を考えるうえで無視できません。FDAの承認説明

ここで見落としたくないのが、今回の根拠となったDB05試験の条件です。登録情報では、過去にエンハーツなどの抗HER2 ADCを使った患者は除外されています。つまり、術前にエンハーツを使い、なお病変が残った人に、術後も同じ薬を使う効果は、DB05だけからは見積もれません。 DB05の選択・除外基準

私は、術前・術後・転移後を、患者数が固定された三つの独立市場として足し上げないようにしたいと考えています。患者が通る順番と、薬を使う場所が変わるからです。術後用途の候補が減っても、エンハーツ自身の術前使用が増えるなら、会社全体の稼ぎは別に評価する必要があります。欧州での広がる時期や規模は、この試算では確かめられていません。

2.採用率50%を、どこまで信じてよいか

図の中間ケースは、統計的に「最も起こりやすい予想」と確認したものではありません。EU全体の治療経路や実質価格が十分には分からないため、研究を参考に条件を置いた計算です。

DB05は再発リスクの高い患者を選んだ試験で、一定の肺疾患などによる除外条件もありました。一方、EUの承認文言は、同じ高リスク条件をそのまま限定していません。試験で見えた8.7ポイントの差を、承認対象の全員に同じように期待できるとは限らないということです。患者の再発リスクと治療の負担をどう評価するかは、実際の採用を左右します。DB05登録情報、EU承認の対象

保険で広く使われる条件も国ごとに違います。EMAは、価格や償還の判断は国レベルで行われると説明しています。EU承認だけで、27か国で同じ時期に同じ割合の患者へ使われると考えることはできません。EMAの価格・償還に関する説明

一つの前提だけ動かしてみると、その重要性が見えます。他を中間ケースのまま固定し、採用率を50%から40%へ下げると、EPS寄与は約2.8円から約2.2円になります。残存病変の割合だけを40%から30%へ下げた場合は、約2.1円です。

これは筆者による感度試算で、二つの変化を同時に起こした予想ではありません。術前用途への利益移動まで計算し直した会社全体予想でもありません。私は、中間値を細かく磨くより、こうした前提を実測で確かめられるかを重く見ます。

3.次の決算では、売上の中身と既存予想との差を読む

欧州のエンハーツ売上が伸びても、その増加が今回の術後適応によるものかは分けて確かめたいところです。確認したIRの地域別売上は、今回の適応だけの数字ではありません。会社が挙げる増収要因や、適応別の処方情報が必要です。決算参考資料

費用側にも、この会社ならではの読みどころがあります。開示では、提携先への粗利益分配が販管費に含まれます。売上拡大に伴って契約上の分配も増え得るので、費用の増加理由まで合わせて見ます。集計された販管費だけから、DB05の利益率を逆算することはできません。同資料・1ページ脚注2

さらに、薬が稼ぐ額と、既存予想を上回る額は別です。臨床結果は2025年に公表され、みずほがDB05の売上予想を引き上げたという報道も承認前にありました。少なくとも、以前からこの利益機会を考える分析は存在したわけです。試験結果発表、Traders Web・2025年11月26日報道

みずほの評価は検索取得本文で確認した過去の報道で、原票は未取得です。現在のEU27・同年度の適応別予想や、市場全体の織り込み額は分かりません。図のEPS寄与を、そのまま今回の承認による新たな上方修正額として足す根拠はありません。

私が次に確認したいことは、次のとおりです。

次に確認する情報更新できる前提避けたい読み違い
国別の償還・導入時期、術後の処方や患者数採用率と、普及が定着する年度EU承認を27か国での同時普及とみなす
術前ADCの使用、残存病変、術後再使用のデータ術後候補の母数と治療順序術前と術後の売上を独立に足す
投与継続・実質単価、利益分配と追加費用の説明一人当たり売上と純利益率欧州全適応の増収をDB05単独の利益とみなす
同地域・同年度の適応別アナリスト予想既存予想を上回るEPS全社目標株価の変化をDB05だけに割り当てる

計算と出典の補足

図の範囲はEU27の女性、2030年3月期に普及が定着する仮定です。候補患者は欧州の罹患推計と複数国の研究を組み合わせたもので、EU全体の実測値ではありません。価格・原価率・追加費用率等にも筆者仮定が含まれ、三ケースは確率区間ではありません。株数約18.2億株と1ユーロ180円を固定しています。今回加えた感度試算も、この同じ中間条件を土台にしています。

他適応への同年度の利益影響を10%差し引く処理は、患者の治療順序を厳密に追った予測ではありません。術前・術後・転移後の利益を精密に計算できたという意味ではなく、更新が必要な仮定です。公開価格とメーカー実質売上、承認一時金と継続的な製品利益も分けています。

本記事の作成には生成AIを併用しています。