11月4日のNovo Nordisk決算で、経口Wegovyへの需要が売上として見えてきました。11月6日早朝の時点で考えたいのは、その先です。患者が増えたとき、値下げや自社薬からの乗り換えを経て、会社にはどれだけ利益が残るのでしょうか。
第3四半期の米国売上は41.78億デンマーククローネ(DKK)、処方は約360万件でした。会社決算p5。Reutersは世界売上53.9億DKKが市場予想46.2億DKKを上回ったと報道しています。ただし予想原票や集計の詳細は未確認。この四半期の世界での上振れを、2027年の米国予想に勝った証拠にはできません。11月4日報道
経口Wegovyはセマグルチドの錠剤です。GLP-1(グルカゴン様ペプチド1)の受容体に作用し、食欲や食物摂取量の調節を通じて体重管理を助けます。注射を避けたい人に、投与方法の選択肢を増やす薬です。
OASIS 4では、糖尿病のない肥満・過体重の成人307人を比較し、生活習慣への介入と併せた64週の平均体重減少は13.6%対プラセボ2.2%。消化器系有害事象は74.0%対42.2%でした。競合薬に勝った試験ではなく、長期の継続率も別に確かめる必要があります。論文要旨。正式ラベルには膵炎・胆嚢疾患等の注意や、甲状腺髄様がんの本人・家族歴などの禁忌もあります。FDAラベル
処方360万件を、患者360万人と読むと計算がずれます。同じ人が繰り返し処方を受けるためです。今回確認した米国資料では、90日分の処方を30日分へ換算しているかも明記されていません。売上を処方数で割った約1,161DKKは粗い割算にとどまり、患者1人の月単価の裏付けには使いません。
そこで使うのが「患者年」です。たとえば180万人が12か月使う場合と、360万人が平均6か月使う場合は、どちらも180万人年。後者は治療を受ける実人数が多い例です。継続が短くなれば、同じ治療量を保つために、より多くの患者へ届ける必要があります。開始人数だけでなく、何か月続くかが事業を左右します。
価格にも別の物差しがあります。現行の自己負担価格は用量別に月149~299ドル。2027年からの錠剤の卸売取得価格(WAC:wholesale acquisition cost)は月675ドルへ引下げ予定です。NovoCare、会社決算p15。患者の支払額、リスト価格、リベート等を引いたメーカー純売上は違います。675ドルをそのままメーカー純単価として人数に掛けることはできません。
図の2027年試算は140万~220万人年、月額純単価900~1,200DKKという筆者仮定です。メーカー純単価は未開示で、これは予測の精度を保証する表ではなく、条件への感度表です。開示売上は適応別に分かれていないため、試算の範囲は米国Wegovy錠剤の製品事業とし、治療対象の集団を重ねて足していません。
中間条件は180万人年、月1,050DKKで売上226.8億DKK。比較の物差しは、米国Q3売上を4倍した167.12億DKKです。この年率換算は、2026年の通期実績でも2027年の会社予想でもありません。
増えた経口薬の売上が、すべて会社の成長になるとも限りません。自社の注射剤から移った場合、その売上減も差し引く必要があります。図では基準を超える増分の30%を自社内の相殺と仮定し、基準を下回る場合の他製品による補填は見込みません。この30%は開示された乗り換え率ではありません。
中間条件ではさらに営業利益率40%、税率22%、固定株数を仮定すると、基準比純利益は約13.03億DKK、EPS(1株当たり利益)は約0.29DKK増えます。会社・アナリストの2027年全社予想には経口薬の成長が含まれ得るため、このEPSをそのまま上乗せすることはできません。
アナリスト評価にも同じ注意が要ります。10月9日のInvesting.comは、Citiが経口Wegovyのピーク売上予想を130億ドルへ引き上げた一方、利益率への懸念から投資判断のNeutral(中立)を維持したと報道しました。証券原票は未取得で、ピーク年と地域内訳も未確認。米国2027年との同条件比較はできません。報道本文
需要の確認は前進です。次に追うのは、継続購入の量、メーカー純単価、自社内の置換、費用を通した利益。患者が増えても単価が大きく下がれば、見立てを修正します。今回探した範囲では会社・主要アナリストの米国2027年の同条件予想は未確認であり、「市場より強気」とも判定していません。
本記事の作成には生成AIを併用しています。